昭和医学会雑誌
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N-Acetyl-Leu-Leu-Methioninal (ALLM) によるGlioblastoma細胞の細胞死の誘導
岡村 康之池田 尚人松本 清立川 哲彦
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2000 年 60 巻 4 号 p. 501-512

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抄録

Glioblastomaは悪性脳腫瘍の中でも, 細胞増殖および浸潤が強く, 周囲脳組織を破壊して進行する予後不良の腫瘍である.この組織の破壊は, 腫瘍細胞から分泌されるproteaseが主役を担っている.中でもmatrix etalloproteinasesやcysteine proteinases, serine proteinasesが代表的なproteaseとして知られている. glioblastomaの浸潤の場合では, 脳組織の基質の特異性により特異的なcysteine proteases (CP) が確認されている.このCPはその阻害剤により制御を受け, その調整バランスの破壊は悪性腫瘍細胞の特徴ともいえ, glioblastoma細胞ではCPの発現と悪性度は正の相関を示している.本研究ではCPの阻害剤がglioblastomaに対して如何なる作用を示し, その作用機序を解明することを目的とした.使用したglioblastoma細胞株は, T98Gと当教室が樹立したヒトglioma由来のglioblastoma cell (SRG4-1) を用い, 一定の条件下で培養した細胞にcysteine proteases inhibitor (CPI) であるALLM (0, 0.5, 1.0μM/mlの3つの濃度) を負荷し, 細胞増殖抑制効果, 細胞周期への効果, 細胞増殖抑制効果とapoptosisとの関連に関する検討を行った.今回, ALLMのglioblastoma細胞株に対する, その細胞抑制効果を見たが, 濃度差による抑制効果が認められた.これに伴う細胞周期での変化を見たところ, G2/Marrestを認めた.そこでDNA fragmentationを見たところ, ladder patternは認められなかったが, 電顕像では核クロマチンの凝集, 核の萎縮が認められた.さらにcaspase-3活性を測定し, 有意に活性の上昇を認めた.また, 免疫染色的にもTunel法やAnnexin Vによりapoptosisが起こっていることが推測され, ALLMによるglioblastoma細胞株の増殖抑制は, apoptosisが関与しているものと考えられた.

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