抄録
我々は当科での術後10年以上経過した京セラバイオセラム型人工股関節の臨床評価およびX線学的検討を行った.対象は26例31関節であり, それらの手術時年齢は平均56.8歳, 術後経過観察期間は平均12年1ヵ月であった.最終観察時のJOA scoreは平均70.2点であった.それらのX線所見はclear zoneを長屋のstage分類にて評価し, stage3, 4を呈した場合をloosening例とした.loosening例は12関節 (38.7%) に認められ, その内5関節 (16.1%) に再置換術が行われた.looseningまでと再置換術までの累積生存率はそれぞれ, 52.1%, 55.3%であった.この結果は当科でのCharnley M霍ller型人工股関節の累積生存率57.3%と差を認めていない.磨耗, 磨耗特性に優れたアルミナセラミック製ヘッドを有するバイオセラム型人工股関節に高い耐久性を期待したが, 長期成績は期待されたほど良好ではなかった.我々は, 一概に人工関節の機種のみが長期成績に影響を及ぼすのではなく, 患者背景, 手術手技, インプラントの選択や骨移植併用といった術前のプランニングなども重要な因子であると考えた.