当科における下肢切断治療依頼に関する症例46例51肢 (男性35例, 女性11例, 平均年齢61.3歳) について, 依頼内容, 原疾患, 年齢, 性別, 切断部位, 合併症, 転帰, 移動能力について調査した.依頼内容は, 術前からの, 切断術そのものも含めた依頼が増加していた.原疾患では閉塞性動脈硬化症 (以下ASO) , 糖尿病 (以下DM) , バージャー病 (以下TAO) などの血管障害性疾患が93.5%と多かった.年齢は外傷で低く, 血管障害性疾患では高かった.ASO単独, またはDM合併例では, 男性に多く, DM単独例では性差は消失傾向にあった.また, 原疾患がDM単独, またはASO合併例では保存的加療により切断を免れる例が8例存在した.切断部位はASO単独, あるいはDM合併例では大腿切断が多く, DM単独例では全例下腿以下の切断であった.合併症はASO単独, またはDM合併例に循環器・脳血管疾患合併が多く, TAOでは主要な合併症は認めなかった.死亡例は切断術前後で6例存在し, 術前の2例は敗血症で, 術後の4例は合併症の悪化で死亡している.移動能力は78.3%で義足装着を含めて歩行自立し, 71.1%が自宅退院を果たした.退院後追跡しえた25例では90.9%で退院時の歩行能力維持し, 非切断例でも全例患肢の悪化は認められなかった.当科での調査結果は他施設と比較し, 血行障害性切断が高齢者に多いこと, 男女比 (約3.2: 1) , DMでの性差の消失 (約1.2: 1) , ASOに比しDMでの末梢血行障害が多いことなどの点が共通していた.しかし, 非切断例が存在しその予後がよいこと, また高齢者の切断例が多いのにも関わらず, 義足装着例, 歩行自立例が多いことは, 術前からのアプローチを各科との連携のもと, 十分に行えているためと考えられた.
抄録全体を表示