2001 年 61 巻 1 号 p. 102-106
併存疾患および合併症のために到達目標達成に難渋した急性脊髄硬膜外血腫による対麻痺患者のリハビリテーションを経験した.症例は, 63歳男性, 体幹の屈伸運動時に背部痛とともに両下肢脱力を認められ, 当院に搬送され, 胸椎MRI施行にて急性脊髄硬膜外血腫と診断された.除圧目的にて椎弓切除術を施行されたが, 対麻痺の改善は認められず当科依頼となった.依頼時の到達目標として, 車椅子で屋内日常生活動作を自立させ, 独居生活が可能となることを目指して, 機能, 能力訓練を開始したが, 狭心症, 腹部大動脈瘤, 虚血性腸炎, 胃癌などの併存疾患および下肢異常感覚, 手関節腱鞘炎などの合併症によって, 移乗動作が自立できず到達目標達成に困難を来した.しかし, 他科との協力のもと併存疾患および合併症を安定化し, 社会資源の活用を増やし独居生活可能となった.