抄録
本研究では, 長期間継続してトレーニングを行っている高齢者 (LG) の体力と血清脂質に対するトレーニング中断の影響を調べた.トレーニング経験のない高齢者に短期間 (12週) のトレーニングを受けさせたグループを対照群 (SG) としてLGと比較した.体力と血清脂質の測定は, 実験開始前 (pre) , 実験開始後12週後 (post1) , 16週後 (post2) , 24週後 (post3) に行った.その結果, post1においてSGではpreに比べて体力, LCAT, CPKの増加, 体脂肪率, TGの減少を示し, 身体機能の向上が認められた.LGではSGのpreならびにpost1よりも体力, Vo2max, LCAT, CPK値が高く, 体脂肪率が低値を示した.4週間のトレーニング中断による影響を検討したpost2においては, 両群にVo2max, 柔軟性, 敏捷性, LCAT, CPKの減少を認め, Vo2maxの減少率はSGよりLGで大きかった.また, HDLCの減少傾向が両群にみられ, LGではTGの増加を認めた.トレーニングの再開, および非再開の影響をpost3において調べた.トレーニングを再開しなかったSGの3名の値は, preと同水準に戻っていた.トレーニングを再開したLGおよびSG3名の各種測定結果はpost2と比較して改善傾向を示した.特にLGではSGを上回るHDLCの増加とTGの減少を認めた.以上の結果から, SGにおける短期間のトレーニングは体力向上や血清脂質改善に有用であり, LGではSGを上回る身体機能の改善作用を示すことが示唆された.これらのトレーニング効果はSGだけではなくLGにおいても比較的短期間で消失することが認められた.さらに, トレーニング再開による効果の回復はSGよりもLGにおいてより強く認められたことから, 長期間の継続トレーニングの重要性が明らかとなった.