抄録
ホルモン抵抗性ヒト前立腺癌に対する温熱化学併用療法における, 温熱療法後のheatshock protein (HSP) の発現が抗癌剤に対する抵抗性獲得の一因となることが予測されている.HSPの抑制が, 温熱化学療法を効果的にするか否かの基礎的検討を行った.まず, 温度条件と温度処理時間を変え, ホルモン抵抗性ヒト前立腺癌細胞株PC3の細胞増殖効果を検討した.温度依存性, 熱処理時間依存性に細胞増殖は抑制された.Westernblot法にてHSP70は温熱処理後に発現が増加したことを確認した.Cycloheximide (CHX) 接触後に温熱処理を行った群ではHSP70の発現は抑制された.次に下記に記す3群の増殖細胞曲線をMTTassay法で求めた. (i) コントロール群: PC3を加温処理せずにcisplatinum (CDDP) またはTHP-adriamycin (THP) を投与した群, (ii) 温熱処理群: PC3を42℃60分間熱処理し, 抗癌剤を投与した群, (iii) CHX+温熱処理群: 温熱処理前にCHXを加え, 熱処理後に抗癌剤を投与した群.温熱処理群はコントロール群と比較して, 明らかな抗癌剤抵抗性を認め, 温熱処理前にCHXと接触させた群では, 温熱療法後の抗癌剤に対する抵抗性を抑制することができた.以上よりCHX併用にて温熱化学療法をより効果的に行えることが示唆された.