昭和医学会雑誌
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手根管部MRI画像から考察する特発性手根管症候群の成因について
池田 純
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2003 年 63 巻 2 号 p. 174-182

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抄録
特発性手根管症候群は上肢における絞扼性末梢神経障害であり, 日常外来診療で経験する頻度が高い疾患である.しかし, その成因については諸家の様々な報告があるが一定の見解を得ていない.本研究の目的は, 近年補助診断のひとつとして有用視されているMRI画像を用いて, その特徴を定量評価することにより特発性手根管症候群の成因を推察することである.なお, 病理学的側面からも考察を加えた.当科で特発性手根管症候群と診断され, 造影MRIが撮像できた26例31手を研究対象とした.全例女性で, 右17手, 左4手, 両側5例で平均年齢64.5歳であった.MRI画像は造影剤を使用し, T1強調axial像を評価した. (1) 手根管, (2) 正中神経, (3) 屈筋腱および腱周囲滑膜 (以下屈筋腱群) それぞれの横断面積, また (4) 正中神経横断面積および (5) 屈筋腱群横断面積それぞれが手根管横断面積に占める割合, (6) 横手根靱帯の厚さの6項目をMRI本体の画像解析ソフトで計測した.その際, 神経学的重症度から軽症群と重症群の2群に大きく分けて正常群4例と比較し, MRI画像との相関性を調査した.統計学的評価にはt-検定を用いた.手術に至った9症例で, 切徐した横手根靱帯にH-E染色, AZAN染色, 免疫組織化学染色を行い参考とした.これらの結果, MRI画像上正常群に比較して, 軽症群では全ての項目で有意な変化を認めなかったのに対し, 重症群では (3) 屈筋腱群横断面積 (平均110.52±25.49mm2: 正常群86.55±9.97mm2) , (5) 手根管横断面積に占める屈筋腱群横断面積 (平均51.59±8.86%; 正常群40.53±2.36%) , (6) 横手根靱帯の厚さ (平均3.32±0.48mm; 正常群2.46±0.42mm) に関して有意に増大を認めた.特に, (3) 屈筋腱群の横断面積増大は神経学的重症度と強い相関性を認めた.重症群における本結果より, MRI画像からみた特発性手根管症候群の成因は腱鞘炎にともなう腱周囲滑膜の浮腫が関与すると考えられた.病理学的にも手術に及んだ全例が重症型であったが, 靱帯線維の配列に乱れを生じ, その線維間に新生線維を確認し, MRI画像から考察した仮説に矛盾しない結果が得られた.つまり, 腱周囲滑膜の浮腫が手根管内の慢性的な高圧環境を生じ, 横手根靱帯に二次的変化を生ずるという経過が考えられた.さらに今回画像の特徴から1: 腱鞘浮腫型, 2: 横手根靭帯肥厚型, 3: 混合型, 4: 分類不能型という4群への分類を試みた.本分類は特発性手根管症候群における病期の違いを描出する一面があり, 臨床上有効な分類と思われる.
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