昭和医学会雑誌
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HIFU照射の動脈血流に及ぼす影響に関する研究
石川 哲也藤原 礼市原 三義市塚 清健岡井 崇佐々木 一昭梅村 晋一郎九島 巳樹
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2003 年 63 巻 3 号 p. 279-285

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抄録

超音波は, レーザ等の電磁波に比べ体内深部への侵達度, エネルギー収束性に優れ人体への影響が少ないことから, 近年は診断のみでなく治療へも応用され始めている.そこで我々は強出力集束超音波 (high-intensity focused ultrasound〈HIFU〉) の照射により腫瘍栄養血管の血流を遮断する低侵襲の腫瘍治療法を確立するための基礎研究として, 実験動物の深部大腿動脈にHIFU照射を行いその血流遮断に至るまでの血管の反応及び組織学的変化について検討した.研究方法: SDラットの深部大腿動脈に対して超音波ガイド下で皮膚上よりHIFUの照射を行った.ピーク超音波強度は530, 1080, 2750, 4300W/cm2とした.HIFU照射は5秒間照射を5回, 目標血管を横切るようにして1mm間隔で照射した.4300W/cm2の照射では完全な血流遮断が可能であったが, その他の強度では不可能であった.1080, 2750W/cm2照射後, 照射部位での収縮期最高血流速度 (PSV) は強度と共に増加していた.しかし530W/cm2照射ではPSVは変化を認めなかった.2750, 4300W/cm2の照射後, 血管中膜に空胞変性が観察された.1080W/cm2ではPSVの増加を認めていたにもかかわらず組織学的な変化は認められなかった.HIFU照射による血流遮断はピーク超音波強度の増加と共に次のように変化すると考えられた. (1) 組織学的変化を認めずに機能的な血管径の狭窄が生じる. (2) 血管中膜に空胞変性が生じ器質的変化の結果として血管径の狭窄が生じる. (3) 血管径の狭窄が進み最終的に血流遮断が生じる.これら一連の変化はHIFU照射による照射部位での温度変化及びキャビテーション現象が引き起こしていると考えられる.

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