昭和医学会雑誌
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介護以前の主観的人間関係からみた介護負担感に関する疫学的研究
大嶋 伸雄星山 佳治川口 毅
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2004 年 64 巻 2 号 p. 215-228

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抄録
主介護者と介護対象者における「介護以前の人間関係」が介護開始以後の介護負担感に影響を与えるという仮説により, 主介護者の介護負担感と他の個別的および環境的要因との関連性について検討した.アンケートは65歳以上の介護保険対象者を介護する女性の主介護者125名を対象として, zarit介護負担尺度 (以下, zarit尺度) および, 主介護者, 介護環境, 介護対象者のそれぞれの特性について調査した.介護以前の人間関係による「良好群」「普通群」「非良好群」の3群に群分けを行って検討した結果, zarit尺度の合計得点 (モデルI) において, またzarit尺度の因子分析により抽出された14項目の合計点 (モデルII) においても「非良好群」の介護負担感が有意に高い傾向を示した.次にモデルIとIIをそれぞれ目的変数とし, アンケート項目を説明変数として行ったステップワイズ重回帰分析の結果, 「非良好群」が有意に高い7項目のうち5項目がモデルIIによって採択された.以上より, 介護以前の人間関係と介護負担感との強弱の関係性からモデルIIと介護以前の人間関係3群は, 有意に介護負担感を反映していることが明らかになった.「良好群」の場合, 主介護者が専業主婦や会社勤務が多く, 「非良好群」ではパート勤務と介護に二分された.「非良好群」では介護対象者が義理の親の割合が大きく, 同居開始時期は病気がきっかけの場合が多かった.また, 介護サービスを受けている時間が長く, 家族理解も有意に良くなかった.これは介護対象者の要介護度が高く, かつ柄澤式による知的・意識レベルおよびN-ADLにおける日常生活動作のレベルも有意に低い傾向であることから理解できる.今回の調査では, ADLの数項目が有意に介護負担感と相関し, とくに「起座・歩行」および「摂食」といった介助の頻度が高い項目で高い相関を示した.以上の結果から, 本研究の仮説を含めた方向性の正しさが示唆された.
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