昭和医学会雑誌
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大腸結節集簇様病変に対する適切な内視鏡的粘膜切除術的検討
入口 陽介
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2004 年 64 巻 5 号 p. 460-468

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抄録

大腸腫瘍のうち, 大小の結節が集簇した結節集簇様病変は, 腫瘍径が大きいわりにsm浸潤率が低率であることから, 内視鏡的粘膜切除術 (以下EMR) の良い適応であると考えられている.しかし, 結節集簇様病変に対してEMRを選択する際の問題点は, 腫瘍径が20mm以上になると, 低頻度ながら外科的手術が必要な高度な脈管侵襲 (ly, v) やリンパ節転移を伴うsm癌が認められることと, 実際にEMRを施行した場合, 腫瘍径が大きいために分割切除となり, 遺残再発の可能性が残ることである.そこで過去13年間に東京都多摩がん検診センターで経験した腫瘍径20mm以上の結節集簇様病変120例を対象として, 適切な治療法の選択を目的に, X線, 内視鏡学的および病理組織学的に検討した.その結果, 腫瘍長径と深達度との間に相関関係は認めなかったが, 外科的手術が必要なsm2, 3癌は14%で, 表面性状における構成成分と治療法決定の重要な因子となる深達度, sm浸潤距離, 脈管侵襲 (ly, v) , リンパ節転移陽性率との間に特徴的所見が認められた.すなわち大きさ10mm以下の隆起を結節とすると, 結節はほとんどが腺腫あるいは高分化腺癌の粘膜内病変であり, 結節のみで構成される病変は, sm2, 3率が3%と極めて低率で, 積極的なEMRの選択が可能である.これに対して, 一部に大きさ10mmを越える粗大結節を伴うものはsm2, 3率が30.8%と高率なため, 同部位の一括切除を前提としたEMRもしくは腹腔鏡下手術を選択する.また一部に相対的陥凹を有するものはsm2, 3率が83.3%で, リンパ節転移率も25.0%と高率であることから, 十分なリンパ節廓清を伴う外科的手術が必要である.次に, EMR後遺残再発症例について検討したところ, 腫瘍径が大きくなるにしたがい分割切除回数は増加し, 10分割以上の4例中2例に遺残再発を認めたが, いずれも追加EMRによって治癒し, 外科的切除術が必要となった症例は認めなかった.また外科的手術を選択した症例の79%をEMR適応病変が占めていたが, その主な理由は, 腫瘍径が40mm以上と大きいために外科的切除術が選択されていた.したがって, 本検討により, 正確な術前診断が得られれば, これまで腫瘍径が大きいために外科的手術が施行されてきた大腸結節集簇様病変に対しても, 身体的侵襲の少ないEMRを積極的に選択できると考えた.

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