抄録
抗甲状腺薬 (ATD) 治療を行っている甲状腺機能亢進症の症例では, 妊娠中に母体のATDが中止できれば, 出産時の児の甲状腺機能も良好であることが多いが, ATDが中止できない場合は児のコントロールは過度に低くなりやすい.今回我々は妊娠第1期 (1st.trimester) の血中TSH receptor antibodies (TRAb) 値とATD内服錠数を用い出産時における内服治療の有無を予測する式を作成した.1st.trimesterにATDを内服の上で甲状腺機能が正常または潜在性甲状腺機能亢進症の症例のうち, ATD内服を1日1錠未満だが必要とした32症例を除外した残りの72例を本研究の対象とし, 出産時にATDを1日1錠以上服用していた症例をATD継続群 (32例) , 中止できた群をATD中止群 (40例) とした.出産時の内服治療の中止を血中TRAb値, ATD内服錠数単独で予測を試みたが, 有意差はあるものの重複する例が多数存在し, 明確に群分けできなかった.また血中TRAb値とATD内服錠数を用い二変量解析を行ったが同様に明確な判別はできなかった.そこで二因子を用い名義ロジスティック解析を行った.y=3.507-0.080×血中TRAb値-0.329×ATD内服錠数上記の式に当てはめて計算したyの値を以下の二つの予測式に当てはめ, 値の高い方を予測結果として採用した.内服を必要とする確率=1/1/ {1+Exp (y) } 内服を必要としない確率=Exp (y) ×1/ {1+Exp (y) } この予測式を用いて新規妊娠出産症例50例の予後の正診率を求めたところ90%であった.本予測式により妊娠早期に出産時の状態が予測できた.この予測式は投薬中止できない症例を予知するのにより有用であり, 臨床において非常に有用であると結論づけることができた.