抄録
近年, 日本における新規HIV感染者数増加率が上昇を続けており, HIV検査相談施策の一層の充実が対策上の課題である.本研究では東京都夜間常設HIV検査相談センター (=以下「南新宿検査・相談室」) における匿名受検者のうち, 推奨時期より早いタイミングの受検者 (=S症例群) の特徴を明らかにすることにより, 自発的HIV検査相談 (=以下“HIV-VCT”) サービスにおける課題を探ることを目的とした.2000年~2002年の抗体陰性受検者に対し行った自記式質問紙調査に対する回答21.406件に対し, 性。年齢階級感染不安要因, 検査回数コンドーム使用頻度を説明変数とし, S症例群 (18.3%) および推奨時期の受検者 (=以下「推奨時期群; (63.5%) 」) についてロジスティック回帰分析を行った.推奨時期群に比しS症例群は, (1) 「20歳代」 (OR: 0.68) ・「30歳代」 (OR: 0.61) に比べ10歳代に多く, (2) 1感染不安要因「異性間性的接触」に比べ「同性間性的接触」 (OR: 1.16) が有意に多く, さらに (3) HIV検査回数が多い程多い傾向が認められ, (4) コンドーム使用頻度が低い程多い傾向が認められた.本研究の解析によりS症例群の特徴は, (1) 10歳代に多い可能性が示唆され, (2) 感染不安要因「異性間性的接触」に比べ「同性間性的接触」が多く, (3) 検査回数増に従って多く, (4) コンドーム使用頻度が低いほど多いと考えられた.今後はさらに多様なHIV検査相談の受検行動パターンを想定して, 各々に応じた予防介入の可能性を探るべきと思われた.