昭和医学会雑誌
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神経膠芽腫培養細胞の放射線照射による放射線耐性と遺伝子発現
福田 直佐々木 晶子泉山 仁阿部 琢巳立川 哲彦
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2006 年 66 巻 5 号 p. 309-324

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抄録

放射線を照射しても生存する細胞は徐々に放射線に対する耐性を得るのではないかと仮定し, 放射線照射前の培養細胞と, 多数回照射し放射線感受性が低下した細胞との遺伝子発現の相違を評価することにより, 放射線照射で得られる放射線耐性遺伝子を検索しようと試みた.放射線照射は24時間毎に1回2Gy施行し, 10Gy毎に細胞増殖率, 浮遊細胞数, 乳酸脱水素酵素の測定にて感受性を評価した.その結果, 治療で施行される60Gy照射後細胞であっても放射線耐性が獲得されることが確認できた.DNAマイクロアレイを使用し3766個の人癌関連遺伝子に関して検索し, real-time RT-PCRにて発現量を確認し, 放射線耐性とパラレルな発現量の変化を認めた遺伝子を5種類同定した.それらの遺伝子はFarmesyl diphosphoate synthease (FDPS) , tumor protein p53 binding protein 1 (TP53BP1) , reticulon 2 (RTN2) , cyclin-dependent kinase 8 (CDKB) , heterogeneous nuclear ribonucleoprotein (HNRPK) で, 多くは細胞周期に関連をする遺伝子と細胞増殖に関連する遺伝子であった.この2つに分類される遺伝子は正常でも発現し細胞の増殖を調整しているが, 放射線照射によりその遺伝子の発現が増強することで, 細胞死への方向というより, 細胞増殖のために細胞内調整が盛んに行われ, その結果放射線耐性に関与していると示唆された.

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