昭和医学会雑誌
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当科における骨髄移植と臍帯血移植後のサイトメガロウイルス感染の比較
前田 崇川上 恵一郎碓井 隆子中嶋 秀人詞服部 憲路安達 大輔下間 順子齋藤 文護柳沢 孝次久武 純一中牧 剛友安 茂
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2006 年 66 巻 5 号 p. 325-330

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抄録

臍帯血移植 (CBT) では血球回復の遅延, 免疫学的再構築の遅延などによりサイトメガロウイルス (CMV) 感染の頻度が増加するとされている.我々は当科で施行した骨髄移植 (BMT) とCBTで, CMV感染の出現率を比較した.対象はBMT21例, CBT19例で, そのうち生着前死亡例を除いたBMT18例, CBT16例について検討した.BMTは全例, 骨髄破壊的移植を施行し, CBTでは8例が骨髄破壊的移植, 11例が骨髄非破壊的移植を行った.また, 移植後の免疫抑制剤はBMTでは全例CsA±sMTX, CBTでは15例がCsA±sMTX, 4例はFK506を用いて行った.CMV感染の診断はCMV抗原血症検査にて行い, CMV抗原陽性細胞が検出された場合にはガンシクロビル (GCV) の早期投与を行った.CMV感染症の診断は侵襲が疑われる臓器の生検により, CMVを証明することによって行った.生着はBMTで18例, CBTで16例に得られ, 平均日数は16.3日, 22.6日であった.GradeII以上のGVHDはBMTでは27.7%, CBTでは50%にみられた.CMV抗原CfTL症はBMTでは5例 (27.8%) で陽性となり初回陽性までの平均日数は55.41日, CBTでは9例 (56.25%) で陽性となり初回陽性までの平均日数は54.4日であった.移植後にプレドニゾロン (PSL) を使用した群ではBMTで60%, CBTでは66.7%にCMV抗原血症が陽性となったが, 移植後にPSLを投与することがなかった群で陽性となったのはBMTで15.3%, CBTで42.8%であった.CMV抗原血症はCBT群で頻度が高い傾向であったが, 高齢者が多いこと, 重症GVHDの出現頻度が高かったことなどからBMT群と単純には比較できない.しかし, 移植後にPSLを使用した例で陽性例の頻度が増加したことは, GVHDに対する長期PSL投与による免疫抑制が原因の一つであると考えられた.またPSL未使用例のみを比較すると, CBT群のほうが陽性率は高く.PSLの影響を除いた場合, CBTで感染のリスクが高い傾向にあった.一方, CMV感染症に発展した例は両群ともに1例のみであり.GCVの早期投与はCBTにおいても有効であった.

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