昭和医学会雑誌
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ペプチドハイドロゲルを用いた3次元モデル人工真皮の作製
冨塚 陽介加王 文祥網倉 良安本田 衣麗保阪 善昭
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2008 年 68 巻 1 号 p. 36-43

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抄録

近年再生医療は目覚しい進展をみせており, 皮膚再建領域においても様々な培養皮膚代替物が開発されている.現在開発されている生きた線維芽細胞を含むハイブリッド型人工真皮はScaffold (担体) に動物由来の物質を使用しており, 未知の感染症に対する潜在的な危険性を含んでいる.そこでわれわれは生体材料由来でないペプチドハイドロゲルをScaffoldとして用いた三次元モデル培養真皮を作製した.方法は, 新生児由来ヒト真皮線維芽細胞をペプチドハイドロゲルと混合後インサートに分注して培養真皮を作製して, D-MEM培地にて最長2週間培養した.培養した標本から病理切片を作製しHE染色, Azan染色, ヒト1型コラーゲンによる免疫組織化学染色を行った.結果は, 標本内には均一なペプチドハイドロゲルによる隔壁が泡沫状に構築されており, ペプチドハイドロゲル内での線維芽細胞の生存を確認できたことから, 真皮様組織が作製できた.また免疫組織化学染色においてヒトI型コラーゲンの存在を確認できたので, ペプチドハイドロゲル内での線維芽細胞はその機能を発現していることが示唆された.培養真皮作製には, 線維芽細胞とその増殖の場となるScaffoldが必要である.現在様々なScaffoldが用いられているが, 今回われわれが用いたペプチドハイドロゲルとは, 標準アミノ酸1%と水99%から構成され線維構造を持った3Dハイドロゲルを形成する.特徴としては動物由来の材料や病原体が含まれておらず生体適合性に優れている.今回われわれは, このような特徴を持ち臨床応用の可能性を秘めたペプチドハイドロゲルをScaffoldとして用いた三次元モデル人工真皮を作製したので, その作製方法, 作製した人工真皮内での線維芽細胞の生存, 機能発現について報告した.

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