昭和医学会雑誌
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脳出血患者の拡散テンソル解析による錐体路の評価と運動機能予後
河面 倫有阿部 琢巳泉山 仁
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2008 年 68 巻 3 号 p. 182-191

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抄録

脳出血患者において, 比較対象となる関心領域 (ROI) を描出された錐体路全体に設定し, そのFA (Fractional Anisotorophy) 値を拡散テンソル解析 (DTA) にて評価し, 発症時と発症3か月後の運動機能との相関を検討した.麻痺を有する脳出血の患者30人を対象に, 亜急性期 (6~14日) にMRIを撮像し, そのデータからWorkstation上でDTAを施行し錐体路を描出した.ROI内のFA値を患側と健常側で測定し, これまでの報告と同様に患側と健常側FA値との比 (FA比) を計算して運動機能予後との相関を比較した.運動機能評価は発症時のBrunnstrom stageの総和と3か月後のBrunnstrom stageの総和を用いた.錐体路全体のFA比と発症後3か月後のBrunnstrom stageの総和間には, 強い相関関係 (相関係数0.74 (p<0.001) ) が認められ, FA比0.95以上の症例で運動機能予後が良好な傾向が認められた.軽度の麻痺との層別後, さらに麻痺の改善程度の検証を行い, 錐体路全体のFA比と発症後3か月後のBrunnstrom stageの改善度間にも, 強い相関関係 (相関係数0.77 (p<0.001) ) が得られた.特に視床出血では被殻出血に比べ, FA比の値が麻痺の予後に大きく影響する傾向が認められ, FA比1.0の症例では, 発症3か月後の麻痺の回復率が著しく高いことが示唆された.脳出血例における, 錐体路全体のFA比の低下は運動麻痺の機能予後と相関し, 視床出血ではFA比から運動機能予後の傾向を予測できる可能性が示唆された.脳出血患者の錐体路の拡散テンソル解析は, 機能予後の予測に有用であると考えられる.

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