2017 年 55Annual 巻 3AM-Abstract 号 p. 179
体腔鏡下手術は低侵襲な手術方法であり,術後のQOL向上を期待できる事から,開腹・開胸手術に代わり近年急速に普及しつつある.しかしこれらに用いられる手術器具は大部分が直管部で構成され,可動範囲の制限や器具同士の干渉,死角の発生などの問題がある.これらを解決するために種々の多関節マニピュレータが開発されてきたが,機構が複雑でシステム全体が大がかりで実用化には至っていない. そこで本研究では,簡易構造で任意の関節を自由に屈曲可能な体腔鏡手術支援用多関節マニピュレータの具現化を最終目標とし,関節部に外部磁場により剛性を変化させることができる「磁気粘弾性エラストマ:MRE」を利用したマニピュレータを新たに考案し,昨年はその構造概要や磁気回路シミュレーション結果,MREの特性等について報告した.今回は上記解析結果に基づいたプロトタイプのマニピュレータを作製し,磁場強度が関節部弾性率に及ぼす影響を検討した.その結果,吸引磁場と反発磁場で弾性率の違いが生じる事,及び磁場制御により関節の屈曲角度を調整可能であることを確認した.今後はMREの特性改善,具体的には磁場強度変化に対する硬度増加率のさらなる向上を図ると共に,磁界制御により弾性率が数十倍変化することが確認されているせん断方向の特性を利用可能な構造を考案・試作し,性能の確認等を行っていく予定である.