生体医工学
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抄録
事象関連fNIRS計測に基づく認知機能の定量的評価
小林 葵岡本 亮太小濱 剛吉田 久
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2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 220

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抄録

高齢化が進む現代社会において,認知機能を含む脳機能の低下による身体の虚弱や認知症患者の増加が社会問題になっており,脳機能の簡便な検査手法の確立が望まれている.fMRIなどの脳機能計測装置は導入や維持にコストがかかり,地方の小規模施設では設置が難しいために,小型かつ安価な近赤外分光分析法(fNIRS)による脳機能計測装置が注目を集めている.しかしながら,fNIRSは,fMRIに比べて空間解像度が低く,また,体動によって生じるわずかな皮膚血流の変動がアーチファクトになる等の原理上の欠点があるために,実験手法や解析手法に制限がある.そこで本研究では,fNIRS計測による認知機能の定量的評価手法の確立を目的として,体動によるアーチファクトを軽減するために事象関連デザイン実験を用い,Posnerタスクにより注意の移動を課した際のfNIRS信号の解析を行った.その結果,注意を向けた領域以外の場所に提示されたターゲットに対する割り込み処理を与えた際に,側頭頭頂接合部付近において賦活が生じることが明らかとなり,fMRIを用いた研究報告と一致することが示された.一方,キュー指標が多重の意味を持つような条件においては,割り込みの効果が低減されることが示唆された.これらのことから,事象関連デザイン実験におけるfNIRS計測信号から,注意のような高次脳機能が評価可能であることが示された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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