生体医工学
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抄録
筋の数理モデルに基づくパーキンソン病患者の筋強剛度評価
松岡 亮遠藤 卓行佐古田 三郎吉野 公三
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 256

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パーキンソン病(PD)の症状である筋強剛の診断は神経内科医がUPDRS partIIIに基づいて体感的に評価し,健常から重症(1~4)までの5段階で表される. 遠藤らは筋強剛の定量評価を目指し他動的な屈曲伸展運動に対する抵抗トルクを計測する装置(MTM-05,ピーアイシステム製)を開発し,抵抗トルクを肘関節角度で説明する線形単回帰モデルを基に拮抗筋の弾性係数を推定した.その結果,PD患者の筋強剛度の増加に伴う弾性係数の上昇傾向を報告した. しかし,筋には弾性要素だけでなく粘性要素と収縮要素があり,先行モデルでは考慮されていない.本研究では弾性要素に加え,粘性要素,収縮要素を考慮したモデルを構築し,その汎化能力を先行モデルと比較し最適モデルを探索した.次に, 筋の各係数を用いた筋強剛度評価の検証を行った.解析は国立刀根山病院で計測された重症度1~4のPD患者80名を対象とした.構築モデルについてそれぞれのAIC値を比較したところ粘弾性+収縮要素モデルのAIC値が最も低い試行の数が多く, 汎化能力が高いことが分かった.全ての運動相において,粘弾性+収縮要素モデルを用いて推定した粘性係数と収縮要素係数については有意差が見られなかったが弾性係数は筋強剛の重症度患者群間で統計的有意差が見られ,筋強剛進行過程において弾性係数は上昇することが示唆された.また, 重症度のロジスティック判別モデルの重症度,1と3以上の患者群間の判別的中率は90%であった.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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