2017 年 55Annual 巻 5PM-Abstract 号 p. 453
癌抑制遺伝子として重要な役割をもつ転写因子p53は、放射線などによるDNA損傷に応答して増加するとともに活性化し、p21、BAXなど細胞周期チェックポイント、細胞死関連遺伝子の発現を誘導する。p53の細胞内での存在量は通常時には主にMDM2によるユビキチン化とプロテアソームによる分解で低く維持されている。DNA損傷が生じるとp53はATMによるリン酸化を受け、これによってMDM2との結合が阻害される結果、分解を免れて蓄積する。本研究は、p53のこの制御機構を基盤として、p53と蛍光タンパク質を融合させることで、DNA損傷に応答したp53の存在量の変化を蛍光変化として捉え、細胞が生きたままでDNA損傷応答状態を可視化するためのシステムを構築することを試みた。まず、正常p53発現、変異型p53発現、p53欠損のヒトがん細胞にp53とGFPの融合タンパク質を発現するプラスミドベクター(pEGFP-C1)を導入し、存在量や照射後の変化をウェスタン・ブロット法やフローサイトメトリーによって解析した。さらに、内在性p53の発現量や照射後の変化をよりよく反映するため、CRISPR/Cas9システムを応用したゲノム編集技術により、ゲノム上でp53遺伝子座にGFP遺伝子を挿入し、融合遺伝子を作製することを試みているので、合わせて報告する予定である。