2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S191
脊髄損傷者は自律神経の機能が失われているため、体温調節機能が低下している。このため、特に夏場などの高温環境下においては熱中症の危険があり、活動が制限されるという問題がある。これらの問題から、脊髄損傷者が積極的にスポーツに参加するには大きな障壁がある。また、車いすアスリートにおいても夏場の体温制御は、トレーニングの効率化や熱中症の事故防止からも重要な課題である。我々はこれらの問題を解決するため、脊髄損傷患者が車いす使用時に使用可能な体温調節システムの開発を行っている。開発したシステムはチューブを組み込んだジャケットに冷水を通すことで身体を冷却する構成となっている。開発したシステムの評価として、健常男性2名を対象に冷却ジャケットを装着し、運動負荷実験を行った。被験者には室温29℃湿度35%の条件で、自転車エルゴメータを用い15分の安静、80Wで18分の一定負荷運動、20分の安静を冷却ジャケット有と無で行った。身体の冷却効果を計測するため、市販の深部体温計(CoreTemp, CM-210, TERUMO Co., Japan)のプローブを後背部の僧帽筋上と前額部に装着し、10秒ごとの計測を行った。測定の結果、運動後の後背部の深部体温の低下がみられ、冷却ジャケットを用いることで深部体温の上昇を抑制可能であることが明らかとなった。