2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S318
大動脈弁狭窄症の治療法に用いる,開心術を行わずに下肢の血管を介して低侵襲に治療する経カテーテル大動脈弁留置術では,患者の弁輪に存在する石灰化等によっていびつな形状で留置されることがある.経カテーテル弁は,2013年に日本で承認され80歳程度の高齢患者に使われており,長期の耐久性はわかっていない.本研究では,弁輪の石灰化の力学的特性を模した患者実形状大動脈弁モデルを製作し,本モデルを組み込み可能な加速耐久試験装置を開発して弁周囲血管形態が試験環境に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.加速耐久試験時には弁に作用する動的荷重が重要であると考え,弁閉鎖時に弁葉に作用する荷重を計測可能な機構を開発した.20 Hz駆動して弁が良好に開閉することをハイスピードカメラで確認し,開発した加速耐久試験装置で経カテーテル弁の耐久試験に関してISO5840-3で規定されている弁閉鎖時の弁前後差圧が100 mmHg以上の時間が一波形の5 %以上となることという条件を達成できた.患者実形状大動脈弁モデルと正円形状の弁輪モデルに留置した弁では,患者モデルに留置した弁膜にしわが観察され,また,閉鎖時の弁に作用する荷重は正円形状の弁輪モデルに留置した方が大きかった.以上より,弁周囲血管形態は経カテーテル大動脈弁の耐久試験において重要な因子であると考えられた.