生体医工学
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超音波を使用した血液粘度変化の観測に関する基礎的検討
笠原 新平廣瀬 稔
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S321

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抄録

体外循環中に発生する血液の異常として、血栓の形成が挙げられる。血栓形成時に血液粘度が上昇することは臨床的な見地から知られており、血液粘度の変化を医療従事者が把握することは極めて重要である。血液の凝固能を確認する方法として、活性化凝固時間(ACT)の測定が挙げられるが、リアルタイムに粘度の上昇を検知することは困難である。本研究では、超音波を用いて体外循環回路から間接的に血液粘度の変化を検出できないかの検討を行った。10 MHzの超音波センサの送信側と受信側が対向するように設置し、測定物を挟み込み、受信波形の観察を行った。グリセリンと水の混合液が充填された体外循環用チューブで測定を行ったところ、グリセリンの濃度により超音波の伝搬時間に差が生じた。超音波は、送信部からゲル、チューブ外壁、混合液を経由して受信部に到達するが、ゲル及びチューブ外壁を伝搬する時間は一定であるため、混合液が伝搬時間の差の要因であると考えられる。経時的に粘度が変化する血液の場合は、超音波の伝搬速度も経時的に変化するため、この伝搬速度の時間変化率を血液粘度変化の一つの指標として利用できる可能性が考えられた。今後は、実際に血液を充填して測定を行うほか、流量や温度を変化させた場合の検討を行い、粘度以外のパラメータに左右されない実験装置の構築を目標とする。

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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