生体医工学
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光ファイバー穿刺によるバルク生体組織光学定数計測
中澤 春奈土井 万理香小川 恵美悠荒井 恒憲
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S322

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抄録

生体組織の光伝搬計算では、吸収係数、散乱係数、非等方性パラメータなどの組織の光学定数を入力する必要があるが、文献によって個体差を超えたばらつきが存在する。光学定数の測定では一般に組織を薄切し、分光光度計で透過率、反射率を求め、IAD法 (Inverse Adding Doubling法)を用いて算出する。光学測定としては完成した方法であるが、生体試料準備で薄切を行うため、生体液の漏出、乾燥とそれに伴う表面の不均一化が生じ、光学定数が変化するという問題がある。

本研究は、従来の組織の光学定数測定では薄切試料作成に伴う誤差が生じやすいことに注目し、バルク組織に光ファイバーを穿刺し、組織内で受光開口角 (FOV)を変化させながら光強度測定を測定することと、光線追跡計算を組み合わせた光学定数測定方法を提案した。実測にて測定した深さ方向の光強度を指数近似して減衰係数を求め、モンテカルロ法を用いた光線追跡シミュレーションで実測結果を説明するように吸収係数と散乱係数を調整して、これらの光学定数を求める。まず, 光学モデル溶液を使用して提案手法の有用性を検討し, 生体試料としてブタ心筋を用いた光学定数測定を行った。対照実験として薄切とIAD法による光学定数の算出を行った。同じサンプルを用いて30分後にもう一度測定したところ、吸収係数が27%減少、等価散乱係数が16%増加し、薄切の光学的測定における影響が確認された。

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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