2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S59
てんかん発作を予測できれば,難治性てんかん患者のQoLを改善できると期待される.そこで本研究では,心拍変動(HRV)解析と多変量統計的プロセス管理を用いて,焦点性発作と同様に全般性発作においても発作予測が可能であるかを調べた.11名の全般性てんかん患者より取得した17例の発作周辺期データおよび約63時間分の74例の発作間欠期データにより全般性発作予測を試みたところ,17例中13例の発作を予測でき,このときの偽陽性率は1.39回/hであった.また検証用発作間欠期のうち発作周辺期と誤検出された時間の割合は5.96%であった.本結果から全般性発作においてもHRV解析を用いて発作予測できる可能性が示唆された.本研究で用いたアルゴリズムが発作周辺期と判定した区間のHRV指標を調べたところ,全般性発作起始前に,必ずしも交感神経活動が優位とはならず,交感神経活動と副交感神経活動のバランスが変化していることが確認された.さらに,本解析結果と全般性発作の機序に関する過去の研究に基づいて,全般性発作起始前においてHRVが変化する要因について考察し,発作起始前の自律神経系活動の変化が全般性発作起始を誘発するという仮説を提案した.しかし,HRV解析では変化の生じた自律神経系の部位の特定はできないため,動物実験等のHRV解析以外の方法で,提案した仮説を検証する必要がある.