2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S60
パーキンソン病は,中脳ドーパミン神経の神経脱落により起こり,早期より交感神経の変性が見られる.パーキンソン病患者の半数近くは,睡眠中に無呼吸・低呼吸状態となる睡眠時無呼吸症候群を併発する.睡眠時無呼吸症候群は交感神経活動の亢進と関連していることから,睡眠時無呼吸症候群を併発するパーキンソン病患者とパーキンソン病患者のない睡眠時無呼吸症候群患者の睡眠呼吸障害の病態は異なる可能性がある.本研究では,パーキンソン病と睡眠時無呼吸症候群の併発患者群とパーキンソン病患者のない睡眠時無呼吸症候群患者群間の睡眠段階の動的遷移過程の違いを解析し,両患者群の睡眠障害病態の違いの一側面を明らかにすることを目的とする.睡眠ポリグラフ検査データより,ある特定の睡眠段階から別の睡眠段階への遷移確率である規格化相対遷移確率を計算した.次に,睡眠段階別に継続時間の確率密度分布を計算した.その結果,レム睡眠から覚醒,ノンレム1への規格化相対遷移確率において,両患者群間で統計的有意差が認められた.睡眠段階の継続時間分布が従う分布の種類については,両患者群ともに,健常者の継続時間分布の種類(覚醒,ノンレム3・4はべき乗分布,ノンレム1は指数分布,ノンレム2は伸展型指数分布)と同様の分布に従った.覚醒とノンレム1それぞれの継続時間分布において,両患者群間で統計的有意差が認められた.