2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S63
近年,音声認識技術やAIの急速な発展に伴い,医療機器分野にも音声操作インターフェースの搭載が拡がりつつある.音声操作は,旧来のマニュアル操作に比較して,ハンズフリーでの操作が可能であることから,簡便で安全性が高いと考えられているが,音声操作を行う際は,指示内容を一旦言語情報に変換する必要があり,また操作の完遂に要する時間もスイッチ操作よりも長くなることが多く,必ずしも認知負荷が軽減されるわけではない.例えば,自動車運転中の音声操作がもたらす認知負荷については,走行中の実車内における運転者の生体信号の計測により評価がなされており,音声操作の問題点の指摘がなされている.しかしながら,実車環境下ではトライアル毎の変化が大きく,再現性の確保が困難であるために定量化も困難となる.そこで本研究では,発話による認知負荷を定量的に評価することを目的として,動的ランダムドット操舵課題を遂行中に言語流暢性課題を課し,発話による操舵精度への影響を定量化して評価した.その結果,言語流暢課題を遂行中の操舵誤差量は,非課題下や,一時的に視線を逸らした場合よりも大きくなることが示された.このことから,発話により生じる操作精度への影響は,視対象への注意の集中が阻害されることに起因する可能性が示され,音声操作デバイスの導入は,利用シーンに応じて検討する必要があることが示唆された.