生体医工学
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シーケンシャル記憶課題における記銘時θ波帯域脳律動振幅の変調
高瀬 崚研ボーセン ジェレッド栗城 眞也横澤 宏一
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S62

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抄録

【背景】記憶対象の呈示直後に認知負荷を低減する機構を反映して後頭領域のθ波帯域脳律動(以下θ波)が増大すると報告されている。そこで、記憶過程におけるθ波の役割を明らかにすることを目的とし、シーケンシャルな記憶課題実行中のθ波振幅の時間変化と記憶成績の関連を調べた。【方法】健常被験者30名(22.79±1.82歳)を対象とした。順番に呈示される7つの矢印の方向(上下左右)を覚えるシーケンシャルな記憶課題を実施し、矢印の呈示順序(1~7)ごとの正答率を算出した。また、課題実行中の脳磁場を計測し、θ波帯域(5-7 Hz)脳律動振幅の時間変化を抽出した。本研究では、以上の実験を記憶対象(矢印)の呈示間隔が250 msのfast条件と600 msのslow条件の2条件で実施し、その結果を比較した。【結果・考察】記憶成績はslow条件よりfast条件のほうが低く、特に記銘の中盤以降(呈示順序3以降)で有意差があった。一方、θ波振幅はslow条件では7つの矢印呈示の直後に各々ピークが現れたが、fast条件では2番目以降はピークが現れなかった。θ波が認知負荷の低減機構を反映しているとすれば、fast条件では呈示間隔が短すぎるために2番目呈示以降で認知負荷の低減機構が減弱し、その結果記憶成績が低下したと解釈できる。つまり、θ波振幅の増大(回復)には一定の時間が必要であり、その回復時間が記憶対象の呈示間隔と記憶成績の関連を説明するように思われる。

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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