2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S105_1
嗅覚細胞は高感度、高選択に匂いを検出することが知られており、細胞を用いた匂いセンサが注目を集めている。従来の細胞センサは蛍光顕微鏡やプレートリーダなど、ベンチトップでの使用が想定される大型の機械が必要であることから、使用場所が限られていた。そこで本研究では、細胞をスマートフォン上に組み込んだ手持ち式の匂いセンサを提案する。スマートフォンのカメラ部には細胞観察用のレンズと蛍光観察用のフィルタを搭載し、ライト部には励起光用のフィルタを搭載することで、スマートフォンのみで、蛍光観察を行える。実際にスマートフォンを用いてカルセインで染色した細胞を観察したところ、蛍光の観察に成功した。次に移動時にノイズがどのようにのるか、デバイスを手に持って足踏みしたところ、シグナルの標準偏差は静止時の1に対して±0.00576に収まった。最後に匂い物質を細胞に滴下して蛍光強度を測定したところ、コントロールとして培地をくわえた細胞の蛍光が消光によって低下していくのに対して、匂いを滴下した細胞の蛍光が上昇することが観察された。これらの結果から、本デバイスによって使用場所に制限されない匂い検出が可能になると考えられる。