生体医工学
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疲労状態の違いによる匂い環境下の認知作業と自律神経機能の影響性評価
林 拓世外池 光雄
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2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S153_1

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抄録

匂いには不安状態の低減,集中力向上,記憶の量や速度の向上などの作用が認められているが,慢性的な疲労やストレスを保有した状態における生体への影響性については十分に評価がなされていない.本研究では,被験者の心身状態の違いによる,匂い刺激と認知課題時の自律神経機能の影響性について評価した.対象は健常成人20名(平均年齢33.7±14.6歳)とし,心拍変動解析により自律神経機能の評価を行った.心理状態の評価には気分プロフィール検査(POMS)を用い,評価項目別に平均点を算出し,高値群と低値群に分類した.実験は室内にバニリン(快臭),スカトール(不快臭),線香(毎日香),無臭のいずれかを充満させた環境下で聴覚オドボール課題を行った.結果,認知課題時は課題後と比較して,バニリンの匂い環境下でLF/HF成分が有意に低値を示した.また,疲労低値群は線香の匂い環境下において,認知課題時にHF成分が有意に高値を示した.疲労感が高まっている状態では,室内の匂いよりも集中が必要な作業自体により意識が向いてしまい,匂いに対して十分な効能や反応が得られなくなると示唆される.

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© 2019 社団法人日本生体医工学会
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