生体医工学
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進化とともに高弾性化する脊椎動物心臓:バネ分子コネクチンの一次構造決定による心室機械特性の検討
花島 章氏原 嘉洋岩佐 真衣児玉 彩橋本 謙毛利 聡
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2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S170_1

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抄録

心臓は脊椎動物共通の臓器であり、その血液ポンプ機能は動物の活動性や体の大きさを制約する重要因子である。動物種間の心房・心室の数や血管の構造などの違いは良く知られているが、心室の機械特性に関する報告は無い。我々は、心臓の伸展性を規定するバネ分子コネクチンに着目し、哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類におけるコネクチンバネ領域の構造について比較検討した。その結果、恒温性でエネルギー消費の大きい哺乳類や鳥類のコネクチン弾性領域は両性類よりも短く、心室としても高弾性を示した。一方、バネ領域短縮様式は哺乳類と鳥類で異なり、約2億5千万年前に出現した哺乳類と鳥類の祖先が心臓を高弾性化する必要に迫られ、分子レベルでは異なった方法を採用して同等の形質を獲得した収斂進化と考えた。心臓の高弾性化を促した原因は、現生両生類には心臓の血管(冠循環)が無く、哺乳類・鳥類の冠循環は拡張期にのみ血液が流れ過度な伸展により血流が阻害されることを考慮すると、冠循環の出現が心臓の伸展性を抑制した可能性がある。個体でもバネ領域は成長に伴い短縮するため、臨床的に注目される拡張障害性心不全は心室機械特性の進化的推移の帰結かもしれない。

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© 2019 社団法人日本生体医工学会
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