2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S213_1
近年,肺の手術法として,切開領域が狭く,術後の回復が早い胸腔鏡下手術が普及してきている.肺の腫瘍切除は,肺の空気を抜いて行うため,肺の形状が大きく変わり,術前のCT(Computed Tomography)画像と術中とで腫瘍の位置が大きく異なる.術中の腫瘍位置推定にあたり,開胸手術においては医師が患部を触診し,正常組織との硬さの違いから腫瘍を推定している.一方,胸腔鏡下手術においては専用の細長い術具での処置になるため触覚情報が不足しており,術中に臓器や腫瘍の硬さを計測し腫瘍の位置を推定する方法が求められている.これに対し,著者らは医師の触覚をサポートするためのデバイスとして,鉗子先端把持部にMEMS 3軸力センサ,鉗子開閉用駆動軸にポテンショメータを取り付けたセンサ付鉗子の研究を行ってきた.センサ付鉗子では,鉗子先端把持部に加わる3軸力と鉗子の開閉量を同時に計測することが可能である.本演題ではMEMS 3軸力センサの手術支援デバイスへの応用例として,センサ付鉗子を用いた把持対象の硬さ計測法と把持位置に対する相対的な腫瘍位置推定法について紹介する.