2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S25_2
腱は階層構造をとっており,線維束,線維,原線維,サブフィブリル,マイクロフィブリルの順に細くなり,最終的に直径1.5nmのコラーゲン分子に至る.コラーゲン分子の長さは約280nmで,これらが4分の1ずつずれながら規則的に配列しており,分子間には架橋が形成されている.一方,試験管内(生体外)において,腱から抽出したコラーゲン分子が分散した溶液のpHと温度を調節すると原線維が再構成される.本研究では,異なるpHで,市販のブタ腱由来の酸可溶性Type I コラーゲン溶液から37℃で原線維を再構成させ,この原線維の引張試験を行った.pHが小さくなると,原線維の引張強度は小さくなり,破断ひずみは大きくなり,接線弾性係数は小さくなる傾向がみられた.さらに本研究では,水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて,異なるpHでコラーゲン原線維を再構成させた場合の共振抵抗と共振周波数の変化を測定した.pHが小さくなると,共振抵抗と共振周波数の変化量は有意に小さくなった.この結果から,pHが小さくなると,再構成された原線維を含むコラーゲンゲルの粘性と吸着量が小さくなることが明らかになった.