2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S275_1
現在,血液脳関門の開放やドラッグデリバリーなどへの応用を目指して,超音波照射により気泡化する相変化ナノ液滴(PCND)が広く研究されている.しかし,気泡化の機序は未解明であり,超音波照射条件との関連も検討段階にある.そこで本研究では,高速度カメラを用いて気泡化の様子を観察した.実験には沸点が異なるパーフルオロカーボン(PFC5,PFC6)で作成した2種類のPCND(平均初期粒子径:0.2 μm)を用いた.ハンクス緩衝液で希釈したPCNDをマイクロ中空糸に注入し,チャンバ付きの水槽の底面に設置した.水槽には脱気水を満たし,水温を35℃に保った.超音波照射条件は中心周波数1 MHz,最大負圧1.0 MPa,波数230波とし,照射中のPCNDの変化を高速度カメラ(HPV-X2,島津製作所)を用いて100万コマ毎秒で256コマ撮影した.1回の超音波照射により視野内で気泡化が観察されたのは,PFC5で10例中5例,PFC6で10例中1例であった.また,気泡化は,全例で照射開始から5 μs以内に始まり(Fig. 1),それ以降に気泡化が起きる例はなかった.このことから,液体中に懸濁したPCNDの気泡化は,超音波の熱的作用ではなく,負圧による機械的作用により起きると考えられる.