2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S87_1
我々は,失明者の脳視覚皮質内に埋植された多チャンネル電極を介して外界像に対応する時空間的な微小電流刺激を与え,その神経回路を駆動することで視覚機能の一部再建を目指す皮質型視覚補綴に関する研究を行っている.本研究では,視覚補綴における刺激条件の至適範囲を決定するうえで必要不可欠となる動物実験のためのプラットフォーム構築を目指した.これまでに,出力64チャネルを持つ微小電流刺激用VLSIチップと,これを最大64チップまで連動制御できる無線式電子モジュールを試作開発した.そこで今回,頭部固定下の齧歯動物を用いた脳皮質の膜電位イメージングによって,この刺激用VLSIチップを使うことで設計通り高精度の皮質内刺激が可能であることを確認した.またこの実験から刺激電流と皮質神経応答の定量的関係が明らかとなり,視覚補綴に有効と思われる刺激パラメータが決定された.続いて,無拘束の齧歯動物を用いた行動実験により皮質刺激と光知覚の関係を調べるため,上記の無線式電子モジュールを改良しウェアラブル化を行った.現在,このウェアラブルシステムの基本制御プログラムを開発し,システムの実証試験に向けた行動実験環境を整備している.