2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S94_2
医療機器として使用されているステンレス (SUS) などの金属材料は生体との接触面において滑りにくく、摩擦による浸襲や不快感が生まれる。また、医療機器は使用後に滅菌を行う必要があり、機器の劣化が課題となっている。生体適合性等の特性を有するDiamond-Like Carbon (DLC) は、医療機器の表面改質手段として注目されている。本研究では、医療機器のDLC表面コーティング技術を活用し、医療機器に摺動性、耐薬品性、耐滅菌性等の機能性付与を目的としている。本実験は実際の医療機関で扱われているSUS304基板を用いた。DLCは、イオン化蒸着法を用いて成膜をした。摺動性を評価するために、ボールオンディスク試験および模擬生体環境下での摩擦係数測定を行った。また、耐久性に関しては、医療現場を模擬した薬品性実験及び滅菌試験を行った。ボールオンディスク試験の結果より、DLCにより摩擦係数が約20%に低減した。模擬生体環境下での摩擦係数測定では、DLC膜の生体に対する摩擦係数の低減効果が得られた。酸性溶液への浸漬および滅菌処理後の結果からDLCの安定性が確認された。以上のことから、DLC膜は、医療機器の表面を改善するための有用な技術であることが示唆された。