2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S94_1
人工呼吸器関連肺炎(Ventilator Associated Pneumonia:以下VAP)とは、入院時や人工呼吸管理開始前には肺炎がなく、気管挿管による人工呼吸管理開始後48時間以降に発症する肺炎である。人工呼吸器使用時の気管吸引や回路交換などが原因の一つとされているが、気管吸引操作によって開放された回路内の細菌汚染の程度などは調査されていない。またVAP発症の原因菌について、緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)などが報告されているが、いわゆる従属栄養細菌については調査されていない。本研究では人工呼吸器の模擬回路内に付着した従属栄養細菌の菌数の経時的変化について検討を行った。模擬回路を大気開放したのち最大10日間まで菌数変化を調査した結果、菌は増殖しないものの、生存し続けた。また採取した菌を同定した結果、基礎疾患のある入院患者に対して人工呼吸器や留置器具を介した肺炎を引き起こす報告があるChryseobacterium indologenesが検出された。以上から一般的には病原性が弱いと言われている従属栄養細菌でも肺に侵入し感染を起こした時にVAPなどに繋がる可能性が示唆された。