生体医工学
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4D-MRI環境下での上行大動脈の血行動態計測を実現する拍動循環シミュレータの開発
中間 菜月服部 薫高田 淳平西村 剛毅森脇 涼川崎 瑛太長尾 充展後藤 康裕坪子 侑佑岩崎 清隆
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 114

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抄録

大動脈二尖弁疾患とは通常3枚ある弁尖が分離発育せず2枚となる先天性疾患である.弁尖が癒合する位置や交連角度の違いにより弁開口形態が多岐にわたり,上行大動脈拡大に影響するとされるが,弁形態ごとの上行大動脈の血流パターンは明らかでない.本研究では,二尖弁疾患における弁形態と上行大動脈の血行動態との関連を定量化するべく,生体大動脈の流量・圧力環境を創出可能かつ,4D-MRIを用いた流れの可視化と血行力学的パラメータの計測が可能な拍動循環シミュレータを開発した.

 4D-MRIでの撮像を可能とするため拍動回路の構成要素には非磁性体材料を採用し,流体循環部がMRIのガントリー内に設置可能なサイズに設計した.左室モデル,大動脈弁モデル,弓部大動脈モデル,大動脈コンプライアンスタンク,リザーバタンクからなる一巡回路として構成し,左室モデルの駆動空気圧と末梢抵抗により体循環の血圧・血流を調節可能とした.トリムしたウシ心膜をウシの下行大動脈に縫合することで弁尖枚数や交連角度を任意に設定可能な大動脈弁モデルを作製し,弓部大動脈モデルはヒトの解剖学的形状を模擬し,撮像時のアーチファクト低減のためシリコーンのみで作製した.

 三尖の大動脈弁モデルにおいて4D-MRIで撮像した結果,ヒト上行大動脈の流れと同様に左室最大収縮時に直進,収縮末期には時計回りに回旋する流れを取得でき,MRI環境に対応した拍動循環シミュレータを新たに開発できた.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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