2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 123
働き盛り世代を襲ううつ病は、長期休職や自殺などの要因となり、その社会的損失は甚大であり、その脳科学に基づく治療法開発は喫緊の課題である。近年、fMRIを用いたうつ病の脳機能解析研究が急速に進展し、うつ病の神経回路異常などの病態解明が進んでいる。演者らはうつ病患者のfMRI脳機能解析から、意欲低下に関連する背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下、反芻症状(くよくよと反復考える)に関連する後部帯状回(PCC)の機能亢進を認め、これが抗うつ薬(SSRI)治療によって改善すること、およびDLPFC-PCCの機能的結合がうつ病のバイオマーカー候補となることを報告した。一方、DLPFCとPCCの機能が拮抗関係にあることから、DLPFCを標的とするfMRIニューロフィードバック(NF)が、PCC機能も抑制し、うつ病の非薬物治療法となりうることから、探索的臨床試験を行った。その結果、抑うつ症状や反芻症状などが改善し、その抗うつ効果が確認された。次に、より簡便で実用化可能なうつ病のNF治療開発のために、健常人を対象に、DLPFCを標的とするfNIRS-NFを行い、抑うつスコア(BDI)、反芻スコア(RRQ)の改善度、安全性およびNIRS-NF前後のfMRIによる脳機能変化を解析した。本セッションではこれらの研究成果を紹介するとともにfNIRSの将来展望について私見を述べる。