生体医工学
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映像酔いにおける眼球運動特性
谷島 祐至吉田 久
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 296

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抄録

近年、3DテレビやVRなどの視覚環境の多様化により「映像酔い」を引き起こす可能性が高まっている。映像酔いとは、映像鑑賞中に発生する乗り物酔いに似た症状を引き起こす現象である。映像酔いの原因には様々な説が提唱されているが、未だに原因究明には至っていない。映像酔いに関する先行研究はMV(Motion Vector)などを用いた「映像の要素」に注目した研究が多いが,一方で同一の映像を鑑賞していても、酔いやすい人と酔いにくい人が存在することから,映像酔いを引き起こす要因が視聴する映像要素のみに依存しているわけではないと考えられる。我々は映像酔いを引き起こす要因の一つとして,映像鑑賞中の視線特性に注目し、空間周波数の異なる映像を用いて映像鑑賞中の眼球運動を測定した。鑑賞する映像は,屋内映像と屋外映像が一方向(pan,tilt)に回転する映像の2種類を用意した。酔いの程度はSSQ(SimulatorSickness Questionnaire)を指標にした。眼球運動解析の結果,SSQが高値であった被験者は,特に室内映像の回転方向に視線移動が大きいという傾向が見られた。一方でSSQが低値の被験者では視線移動距離は大きくなかった。空間周波数が高いと思われる映像で上記の現象は顕著であった。今後,被験者を増やすとともに,空間周波数が異なるランダムドットの視聴実験などより精密な実験を実施する予定である。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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