生体医工学
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呼吸様式の違いが心拍変動特性に与える影響
高吉 聡司清野 健金子 美樹重松 大輝
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 313

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抄録

深呼吸,ロングブレス,腹式呼吸など,呼吸を意図的に制御することで,リラックス効果や集中力を高める効果があるといわれている.そこで,本研究では,呼吸の様式の変化が自律神経機能に及ぼす効果を検討した.ここでは,健常男性4名(年齢22.5±0.6歳)に対して,吸気と呼気の時間の比を1:2に制御した呼吸,呼吸比を指定しない随意呼吸,不随意呼吸について,鼻口気流および心拍変動時系列を計測した.ここでは,代表的な心拍変動指標である高周波数(HF: 0.15~0.25Hz),および低周波数 (LF: 0.04~0.15Hz)領域のパワーに基づく指標に加え,Bauerらが提案した位相同期加算(PRSA)信号のパワースペクトルを推定し,そのピーク周波数およびパワーを推定した.さらに,呼吸周期と心拍変動の位相同期現象についても分析した.分析の結果,呼吸様式の違いとは無関係に,呼吸数と心拍変動のlnHF,ln LF,LF/HFの値に強い相関がみられた.不随意呼吸と随意呼吸間では,前述の心拍変動指標に有意差が見られたが,その違いは主に呼吸数の違いに起因するものと考えられた.一方,呼気時間を長くとった随意呼吸では,他の呼吸様式に比べ,LF/HFが小さくなる傾向が見られた.講演では,心拍変動のPRSA信号の特徴,および同期特性の変化についても議論する.

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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