2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 459
近年介護老人保健施設では,心不全を伴う利用者が増加している.施設では入浴,排泄,食事などを含む,多様な場面で介助が必要となるが,中でも入浴時は利用者の身体への負荷も大きく,不整脈発生等への注意が不可欠である.本研究ではこれまで,浴槽壁内蔵の電極(導電・容量結合含む)や,クッション型の心電図・呼吸計測システムを開発してきた.しかしこれらは,移乗支援機構を伴う介護用浴槽への適応が難しいという課題がある.また近年は心拍計測機能を持つスマートウォッチの普及も進むが,認知症を伴う高齢者への装着は困難を伴う.そこで今回,浴槽内の湯面に浮かべるだけで心電図信号を検出できるシステムを新たに提案する.本システムは,心電図検出用の2つの電極,体動ノイズ除去回路,信号増幅回路,Wi-Fiモジュール,マイクロプロセッサを内蔵した防止型ユニットを湯面に浮かべる.この際,本ユニット下部の電極がお湯に接し,これら電極間の電位差により心電図を検出する.得られた信号はマイクロプロセッサ内で解析され,別途施設内に設置されたWi-Fiルータを介してクラウドサーバに送信され,Web上で心拍数,体動の有無,信号消失などの異常発生を確認可能とした.本システムを用いた22歳健常成人5名における浴槽内での計測結果より,本システムは良好に心電図を検出可能であることが判り,介護施設における見守り支援に有効であると考えられる.