2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 127
【本研究の目的】2018年の台風21号では大阪府南部の多くの病院が停電し、同年の北海道胆振東部地震では全道停電に陥った。病院がひとたび電源喪失(院内の電気供給が不足する状況)すると、病院機能低下は免れない。そこで本研究では、この両災害における実病院での発生事案を分析し、今後の電源喪失対策推進方法について述べる。【研究方法】上記2つの災害を対象としたサーベイランス調査を実施し、院内発生事案を分析する。次に、対策について、設備強化策、物品購入策、マニュアル作成および訓練に分類し、今後の対策推進方法について述べる。【結果と考察】2つの災害では、院内停電が,EV停止,給水停止,電子カルテ故障および空調停止を招き、治療継続に多大な支障が認められた.また、地域の停電が病院に新たな負荷を与えたことも明らかとなった。電源喪失対策の物品購入策として「電子カルテや医療機器用の非常用蓄電池購入」や「蓄電池代わりの電気自動車購入」などを挙げた。一方で、これら購入物品を使いこなすためのマニュアル整備や実動訓練も重要である。【今後の対策推進方法】「病院の電源喪失対策は費用が高額となる」とのイメージが強いが、一般的に購入できる物品を組み合わせることで、機能低下を免れることもある。今後は、このような安価で安心な対策も注視すべきであり、特に医療機器については、災害時にも継続的に使用できるように電源を確保する必要がある。