2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 150
補助人工心臓をはじめとする機械的循環補助装置の実用化に向けた非臨床試験では、生体適合性や実現可能性を検証するための大動物試験や、デバイスの機械的耐久性を評価するための模擬循環試験が行われる。一方、探索的研究開発の段階において、生体の循環系の環境を模擬した流体回路(広義の実体循環シミュレータ)による評価技術は動物試験に係る人的、時間的・経済的コスト削減に有用である。本発表ではまず、機械的評価系として我々が開発した模擬循環試験装置(自然心に相当する拍動ポンプを備えた流体回路)で、正常心あるいは病態心の循環系を模擬した圧力・流量負荷を発生可能とするための機構を示し、さらにデバイス評価への応用事例を紹介する。一方で、in silicoの血行動態シミュレータは、人工臓器分野への応用も含めて、国内外から多くの報告がなされており、近年のコンピュータ技術の進歩に伴って機械的補助循環装置開発へのさらなる活用が期待されている。ここでは、簡便な電気回路モデルで構築したPCベースのリアルタイム両心室循環シミュレータを用いて補助人工心臓制御に関する基礎検討を行った結果について紹介する。さらに、同様のシミュレーション手法を模擬循環装置実機の改良に相補的に活用するための取り組みについても併せて報告する。