2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 152
広島大は県医療関連産業クラスター形成事業の一環として、インド政府と連携したバイオデザインプログラムを構築してきた。国内市場の縮小と新興国市場の拡大に対応し、ニーズに基づく低廉ながら必要十分な機能を有する機器開発と、これを担う人財育成を目的とする。バイオデザイン手法を先駆的に取り入れた米国とインドでは、「シリコンバレー型バリューチェーンの確立」、「リーンスタートアップを原動力にデジタル化を遂げた新興国型イノベーション」という解が示され躍進が続く。我々はインドでの学びに立脚し、現場ニーズ(=痛み)を満たし、手が届く価格の機器を日本の技術力と信頼性を活かして開発するフルーガルイノベーションの実現を目指す。2019年にフェローコースを開設し、ものづくり企業への学術指導を実施した。2020年には、未曾有の疫禍となったCOVID-19により、限られた医療資源の最適化が求められるなか、物流が滞る状況下で開発できる体制を構築した。地方を拠点とする医療機関、大学、企業がリソースを持ち寄る分散型開発プラットフォームを提案し、AMEDの採択を受け「ウイルス等感染症対策技術開発事業」を推進する。発明者である石北直之の所属機関である新潟病院に事務局を設置し、同院が事業の実施機関となった。この取り組みをCOVID-19の蔓延する社会情勢においてもレジリエンスを発揮し、機器開発を推進する最適解となりうる可能性とともに報告する。