生体医工学
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医療的ケア児の支援に向けて育児工学ができること
小谷 博子
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 234

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抄録

近年、新生児医療の発展に伴い、NICU退院後も医療的ケアを必要とする子どもが増えており、その数は全国で約 2万人と推計されている。医療的ケアとは、人工呼吸器、気管切開、喀痰吸引、経鼻栄養等であり、通常医療行為として医師や看護師が行うべき処置を、日常生活の援助として家族が行う処置のことである。これまで医療的ケアを必要とする子どもたちが利用できる保育・教育サービスを提供する施設や機関は極めて少なく、保護者の個人的な努力と熱意によって、一部の子どもたちだけがその機会を得るに留まっていた。しかし2016年に児童福祉法が改正され、地方公共団体において、医療的ケア児の支援に関して保健、医療、障害福祉、保育、教育等の連携の一層の推進を図るよう努めることとなり、医療的ケア児の状況が大きく変化した。今後、保育園や学校の通園(学)において医療的ケア児の受け入れ体制の拡充により、医療機器を操作する非医療者(教員や保育士など)が増加していくと予想される。医療ケアにおいて、乳幼児と成人では処置の仕方が異なるケースや、処置を正しく行わないと効果がないばかりか、病状を悪化させてしまうこともあり、正しい知識と理解が必要である。非医療者のための研修はもちろんであるが、事故防止の観点からも小児用医療機器のユーザーインターフェースの標準化が期待される。本OSで医療的ケア児の支援に向けて育児工学ができることについて考えてゆきたい。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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