2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 297
外反母趾足では,第1中足骨頭は回内位にあるとされ,術後の再発の原因としてこの回旋変形の矯正不足が挙げられる.しかし,第1足根中足関節の固定術を施行し,回旋を十分に矯正しても,再発する症例が散見する.我々は,外反母趾では,第1中足骨の回内や足部全体の回内と同時に,「第1中足骨自体の捻れが存在する」ためであると仮説を立てた.今回の研究の目的は,外反母趾と健常足の中足骨の捻れを3次元的に評価することである. 健常足10足,外反母趾足10足に対し,足部CTを撮影した. ICPアルゴリズムを用いて比較するために,健常足の中から無作為に選択したものを基準足と定めた.3次元画像を構築した後,基準足に被験者の第1中足骨の近位部35%と遠位部35%を近似的に重ね合わせた.基準足と遠位部の近位部に対する骨軸周りの回転角度を,第1中足骨の捻れ角と定義し,第2~5中足骨についても比較を行った.外反母趾足では,第1中足骨は健常足と比較して平均14°回内方向に捻れていた(p < 0.01).第2~5中足骨では有意差は認められなかった.本手法では,単純X線像などでは困難であった中足骨の捻れを3次元的に詳細に評価することができた.手術後に中足骨の回内が残存すると,外反母趾変形を再発させる可能性があり,矯正に際しては第1中足骨自体の捻れも考慮する必要があると考えた.我々は,この結果をもとに術中の回旋矯正を高める方法を改良し,実践している.