生体医工学
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眼球・頭部の向反を伴う焦点意識保持発作を呈する前頭葉てんかんで脳磁図が局在診断に有用だった一例
土屋 真理夫石田 誠大沢 伸一郎柿坂 庸介菅野 彰剛神 一敬張替 宗介中里 信和
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 351

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抄録

緒言:眼球と頭部を一側に向反させるてんかん焦点は前頭眼野に存在し、発作起始側を示唆する側方兆候として重要視されている。今回我々は、同発作を呈した左前頭葉てんかん症例において、脳磁図が焦点診断に有用であった経験を報告する。症例:症例は21歳女性で、5歳時に全身けいれんでてんかんを発症した。13歳より意識が保たれた状態で両側眼球および頭部が右に向反する発作が出現した。当科で包括的てんかん精査を行った。ビデオ脳波モニタリングでは発作間欠時、発作時ともに脳波異常を記録できなかった。MRIでは左前頭葉中心前溝から脳室にかけて”transmantle sign”を認め、皮質形成異常(focal cortical dysplasia; FCD)が疑われた。FDG-PETでは同部位の糖代謝低下を認めた。結果:脳波脳磁図の同時計測において、脳磁図のみでてんかん性活動を記録できた。棘波信号源はMRI病変に一致して推定された。後日施行された切除検体によりFCD type IIbの診断が確定した。考察:てんかんの包括的精査において、各種所見を一元的に説明できる仮説を構築することは治療方針に極めて重要である。本症例では、脳磁図がてんかん診断に果たした役割は大きかった。実臨床では脳波と脳磁図の特徴を考慮したうえで、脳波で明らかな異常を認めない場合には脳磁図を積極的に考慮すべきであろう。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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