2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 458
多くの細胞種において機能性を発現するには三次元構造が必要であることが広く知られている。そのため、近年iPS細胞などの幹細胞を用いた再生医療・創薬研究ではスフェロイドやオルガノイドを安定したサイズ・品質で大量に作製する方法が望まれている。スフェロイドの作製手法としてはこれまで様々の手法が提案されてきたが、いずれの手法においても物理的・化学的な刺激を排除することが困難であった。分化誘導においてもスフェロイド状態では内部まで誘導因子の影響が及ばず、不完全な分化になるなどの課題があった。また、従来手法では一度に作製できるスフェロイド数が少量であることや、大量に作製できるものの装置が高価であるなど、費用面やプロセスの煩雑さに起因する作製効率も課題となっていた。我々は上記の問題を同時に解決できるスフェロイド作製足場を開発した。フッ素樹脂に細胞接着分子をパターン化した構造を有し、大掛かりな装置を用いることなく、一般的な細胞培養プロセスのみで、寸法が制御されたスフェロイドを足場から劣化なく剥離することができるものである。この手法を用いることにより、安定した品質のスフェロイドを簡便かつ安価に作製が可能になると考えられる。