2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 509
現在、iPS細胞由来心筋細胞は再生医療や薬効試験における細胞材料として注目されており、その実用化において高速かつ簡便な品質評価手法が必要とされている。現在一般的に使用されている電気生理学的特性の評価法として、細胞外電位の測定や膜電位感受性蛍光色素を用いる方法があるが、我々は磁場計測が非侵襲・非接触・非破壊的に行えることに着目し、細胞の電気活動に伴って生じる自発磁場をSQUIDセンサで計測することにより、細胞の状態を定量的に評価する手法を検討している。本研究では培養細胞から生じる微小な自発磁場を、ノイズを含んだ計測データから検出するために有効な手法の提案を目指した。最初に、遺伝アルゴリズムを用いたパラメーターの最適化により、マウスiPS細胞由来の心室タイプ心筋細胞、およびペースメーカー細胞の活動電位を再現する計算モデルを作成した。次にこれらの計算モデルを用いて細胞の集団に生じる電気活動伝播のシミュレーションを行い、伴って生じる自発磁場の分布を推定した。さらに推定した磁場波形を教師データとした深層学習を行い、得られた学習済みのネットワークを用いて、SQUIDセンサで計測した実データから微小な生体信号の検出を試みた。その結果、光学顕微鏡で観察された拍動や電極によって計測された細胞外電位と周期性が一致する磁場シグナルの検出に成功し、この手法の有効性が示された。